一般社団法人甲州青年会議所 2024年度

第51代理事長 岡 二成

【はじめに】

わたしは、青年会議所に入会してちょうど10年を迎えました。この10年の間に、委員長を3度、副理事長3度と多く役職を経験し、成長させていただく機会をいただきました。しかし、私には理事任期の途中から、3年ほど青年会議所活動から遠ざかっていた時期があります。それはこの間に、社業での役職が変わり大変に忙しくしていたことと、もう1つ誤解を恐れずに正直申し上げると、青年会議所に所属していても自分は成長などできないのではないか、と後ろ向きに考えてしまっていたからです。日頃の忙しさも相まって、社業に誠実に没頭した方が、社業のためにも、自分のためにもなるのではないか。そう自分の中で結論づけてしまっていたというのがその理由でした。

しかしながら、その遠ざかっていた期間においても、私の青年会議所の活動に対して後ろ向きになっていることを恐らくご存じだったと思いますが、「いつでも力になるからな。」と多くの先輩方が私に肯定的なメッセージをかけてくださいました。3年ぶりに「理事に復帰しないか。」と声をかけていただき、委員長として日々の活動に没頭する中で、私自身が大きく見落としてしまっていたことですが、この組織には多くの人を成長に向かわせてくれる「学びの土壌」が存在していることを再認識することができたのです。

青年会議所とは、多くの捉え方があるのでしょうが、地域の青年たちが地域のために活動し、そして多くの機会を通じて自己成長を達成することができる場である、という言葉に集約されるのではないか、と私自身は考えています。そして現在、甲州青年会議所は設立以来最も会員数の少ない渦中にあります。この甲州青年会議所という場が、これまでも、これからも、地域の青年にとって成長できる場としてあり続けるためには、時代に合わせて組織自体も変容させつつ、より会員にとって、地域にとって魅力的な組織になることが、目指すべき方向性であると私は信じています。

【子どもたちの未来のために】

子どもはいつの時代も、地域の宝です。子どもがいない社会、子どもが不幸な社会には、その先の未来を語る由などありません。アフリカには、「1人の子どもを育てるのに1つの村が必要である」という古くからの諺があります。つまり、子どもが大きく成長していくためには、安心でき信頼できるコミュニティーの中で、たくさんの大人の目に見守られて、手をかけてあげなければいけない、という言い伝えです。

今日、日本の子どもたちを取り巻く環境は、私たちが子どもだった時代と比べて、年々厳しくなっている状況にあるといわれています。それを示す根拠として、令和4年度は乳幼児から18歳までを対象とした児童虐待の相談対応件数は過去最高の21万件を超え、小中学生の不登校児童は、前年度より2割も増え約30万人にものぼり、さらに小中学生の自殺者数は初めて500名を超え過去最多となりました。少子化の影響で、子ども全体の絶対数が減っているにもかかわらず、このような結果となってしまっているのです。加えて、2020年にユニセフが公表した報告書によると、日本の子どもの精神的幸福度については、先進38か国中37位とほぼ最下位であることがわかりました。この結果を、子育て責任世代でもある私たちは、どのように受け止めるべきでしょうか。

私たち青年会議所は、家庭でもなく、学校でもなく、あるいは公的な機関でもありませんが、地域に根付いた青年団体という第三者的な立場から、地域の子どもたちの安心や安全、また成長や学びに深くかかわっていくことができる組織であると私は信じています。私たちのポジションだからこそできる、子どもの「今」に寄り添い、子どもの「未来」を紡いでいける、そして、子どもたちが将来に向かって自分自身の幸せな未来を描くことのできる地域社会を、共に目指していきましょう。

【大人の最後の学び舎として】

これまでの日本社会では、人材は企業にとってコスト(負債)として捉えられてきました。しかし近年では、人材こそがアイディアやプロダクトを産む源泉であるという捉え方が主流になり、大手企業では人的資本の情報開示が義務化されるなど、人材に対していかに投資をできるか、というのが社会的に問われる時代となりました。つまり世界的に人材への投資が、これまで以上に熱い注目を浴びているのです。

さまざまな技術の発達により、今日では、いつでも、どこでも、望みさえすれば、社会人は個人的な学習をする機会に恵まれています。またそれと同時に、社会の急激な変化が繰り返される中で、「リスキリング」「アンラーン」という言葉に代表されるように、社会人として経験を積んいく中でも常に学び直しを図り、生涯にわたって学んでいくことが社会的にも求められる時代となりました。

私は、人間の成長には大きく2つの考え方のタイプがあると考えています。1つは、前段にも挙げた個人的な学習を通じて、知識や情報、スキルを貯め、自分自身の中身を充実させていくタイプです。そしてもう1つは、多様な人やチームで協業し切磋琢磨することで、そもそも自分自身を形づくっているフレーム(器)自体を大きくしていくというタイプです。世の中に溢れ、そして多くの人が思いつくのは、前者のタイプであると思います。しかし、社業において、地域において、リーダーシップを発揮し成果を上げつづけていくのに必要なことは、前者のタイプにおける成長はもちろんですが、後者の自分自身のフレーム(器)を大きくさせていくことが、何よりも重要であると私は考えています。

青年会議所は、古くから「大人の最後の学び舎」であると称されてきました。青年会議所での経験や学びは、単純な一方通行的な学びではありません。協業的で、実践的な学びに満ち、自分の可能性を拡げることができる学びの種が、あらゆる場面に敷き詰められていると私は考えています。単純に人脈が拡がるということではなく、多様性あふれる同志とまちづくり、ひとづくりの機会を得ることによって、経験を学びへと意味づけし、自らを変容させていくことで、一回り大きな自分が築かれていくのではないかと考えています。

【組織づくりはすべての基本】

人間の体と同じく、組織にも体調があり、それは常に一定ではありません。健康的な体であることが、人間が社会的な活動をしていく上での基本となるように、私たちが青年会議所運動・活動を展開していくためには、まず組織がどのような状態にあるかを確認し、健康的な組織をつくっていくことが、まず何よりも重要なことであると私は考えています。

これまでの青年会議所は、毎月の会議の中で例会や事業の計画書の中身の議論に終始し、会員個人の状態や委員会(チーム)、組織の状態を確認しあうこと、つまり、ピープルマネジメント(人的資源管理)の意識があまりなかったのではないかと、私の経験上思います。会員1人1人が、甲州青年会議所に所属しているという「所属実感」をもち、地域に貢献しているとう「貢献実感」を感じながら、自らも成長をしていると感じる「成長実感」が得られる。これを一言で表すと、「組織エンゲージメントの向上」ということになりますが、私は甲州青年会議所のエンゲージメントを上げていく必要があると思います。

そのために私たちは、「この組織ならなんとかやれる」「この人たちと一緒ならなんとかやれる」というような組織的な効力感を感じられる土壌や雰囲気を、みんなで築き上げていくことが必要だと思います。あわせて、お互いが本音で語り合うことのできる心理的に安全性の高い場づくりをしていく必要があると思います。会員向けの対内的な情報発信を充実させ、会員が相互に交流できる場を設けることで、みんなが共に成長していける組織内の土壌を耕していきましょう。

【結びに】

私自身が経験し体感をして感じてきたことですが、正直に申し上げて、青年会議所で活動を継続していくのは容易なことではありません。それはお金の面でも、時間の面でも、精神的な面においても、そのすべてを両立させていこうとするとどこかに歪みがでてきてしまいます。この多忙な時期をうまく乗りこなしていくためには、自分を自分自身でうまくセルフマネジメントしていくしかありません。しかし、青年と呼ばれる時期にそれを引き受けて全うしたという経験は、これから先に訪れるだろうどんなに苦しい場面でも、乗り越えていくことができるあなた自身を築いていけると思います。活動を続けながら、自分1人で抱えることがなかなか難しいと感じるときは、同じ志をもつ仲間同士で支え合い、お互いの成長をみんなで期待し、自らの所属するこの組織を、尊重することのできる魅力的な組織へと創りあげてまいりましょう。

甲州青年会議所は2023年度に設立50周年を迎えました。2024年度は、51年目の第一歩目となります。改めて、みんなで青年会議所がどうあるべきか語り合い、そして、みんなで共に成長をしていける組織となれるように邁進していきましょう。

■ 2024年度 Slogan ■

魅力ある組織へ
~1人1人が自己成長できる組織を目指して~

【 基本方針】
□子どもたちに学びと体験の機会をつくろう
□会員に大きな学びと成長の機会を提供しよう
□組織エンゲージメントの向上を目指した組織をつくろう
□会員拡大から会員拡充をめざそう
□さまざまな青年会議所の事業に参加しよう