一般社団法人甲州青年会議所 2022年度

第49代理事長 武井 芳樹

【はじめに】

私は、2017 年に(一社)甲州青年会議所に入会致しました。その後、2019 年に青少年育成委員会の委員長を仰せつかり、初めての理事メンバーとしての緊張感と、これから私にどのような事業が計画できるのかと胸を膨らませていたのを今でも思い出します。その時の事業としましては、感謝と環境を軸としたキャンプを計画し、その年の山梨ブロック内の褒賞事業で、(一社)甲州青年会議所としては初めてとなる最優秀賞を頂くことができました。この最優秀賞は、当時の会議で様々な意見やアイデアを頂いた理事役員のメンバー、支えてくれた委員会のメンバー、当日と事前準備では委員会という垣根を越えたメンバーの協力を得て、みんなで作り上げた最高の事業でした。この出来事は、私の人生の中でも貴重な経験となりました。その経験を踏まえて一言。青年会議所は、本気ですごい。青年会議所は、青年に発展と成長の機会を提供してくれる場といわれます。まさにその通りでした。役職を通じて地域の課題に取り組む姿勢が自己形成の大きな第一歩であり、成長につれて自身の活動も地域のためにと能動的になっていきます。そして私たちの運動は、甲州市に住む誰かのためであり、決して損得だけで物事を考えず、無条件で奉仕しています。青年会議所内では、利害関係のない多様性溢れる会員同士の助け合い、支え合いから生まれています。つまり、全てに共通していえることは、そこに愛があるということです。青年が町をより良くする運動のために必要な成長とは何か。私は、愛だと考えます。私がこの所信を書いている現在も、新型コロナウイルスにより過去に類を見ないほどのパンデミックに覆われ、都心部を中心とした「緊急事態宣言」、山梨県には新たに「まん延防止等重点措置」が適用されました。それによる要請、自粛など、感染予防対策は一段と厳しくなりました。ですが、この感染予防対策も上記と同様だと考えます。自身を守ることだけではなく、他者に感染させないために予防するという考えであり、他者を重んじる愛のある行動でもあります。また、コロナ流行により劇的な変化を余儀なくされパラダイムシフトが起きています。自ら変化していくという流れより、コロナ危機によって目まぐるしく変化させられ、半ば強制的に対応していく時代となりました。今後も現状を見る限り、after コロナではなく、with コロナ時代が長く続くことが予想され、社会的に「分断」と「孤立」はより一層深まっていきます。このように課題が浮き彫りとなった中、私たちは改めて何をするべきなのか、この危機をどのように乗り越えるのかは私たち青年の行動にかかっています。社会の変容に、ただ対応しているだけでは現状維持であり、成長とはいえません。常に時代に合わせ、自分自身を磨き成長させていくことが重要です。失敗を恐れる必要はありません。何かを変化させるには必ず少しの失敗はあります。そして、この危機を乗り越えられるのは、同じ志を持った多くの仲間がいる青年会議所です。一緒に変化を恐れずに前に進みましょう。今までに私たちが行ってきた、地域を想う青年会議所運動の根底にある愛という気持ちは、コロナ禍であろうと何一つとして変わりません。この時代に必要なモノこそ「愛」だと私は確信しています。

【ベジ食べる KOSHU ブランディング】

3ヵ年継続事業、「ベジ食べる KOSHU」は、今年で3年目を迎えます。この事業は未曾有のコロナ禍に苦しむ甲州市の飲食業、観光業、ワイナリー、宿泊施設の事業者様のために何かできないかという気持ちから計画に至りました。2022 年にはインバウンドが再開するという仮説を立て、それまでに事業者様と一丸となって事業構築をし、「ベジタリアン・ヴィーガン」を軸にインバウンド需要を取り込むというゴール設定をしていましたが、現状では見通しが立ちません。一方で、今年度は山梨ブロック大会の主管 LOM として、甲州市の魅力を最大限に発信できる場があります。そこに焦点を合わせ、いつか来るインバウンド回帰に備えるとともに、しっかりとベジ食べる KOSHU のブランディングを進め、求心力を高めていく必要性があると考えます。それにより国内外への発信力が強化され、甲州市の発展につなげることができます。「ベジタリアン」のベジとはベジタブルが由来ではありません。ラテン語の vegetus(ベジェトゥス)が語源で、「健全な」「新鮮な」「活力のある」という意味になります。
菜食は人によって目的意識が違い、環境問題、食料問題、アニマルウェルフェア(動物の福祉)、アレルギーなど健康上の問題、宗教上など様々です。その為、ベジ食べる KOSHUは国際化、多様性への理解を示すことで、国内外問わず誰もが安心して訪れたくなる町、誰一人取り残さない甲州市になることができるのです。私たちがこの事業を始めた原動力である、今一番苦しんでいる事業者の方々を助けたい、好きな町を良くしたい、という気持ちがよりよい町を作っていきます。この気持ちは目には見えませんが、確かにそこに「愛」があります。この事業が甲州市を救う希望となることを信じています。

【ナラティブアプローチによる組織改革】

昨今、ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(受容性)の重要性が広く認識されるようになりました。さらには SDGs の掲げる「誰一人取り残さない」は多様性の尊重であり、会員個々の生活リズムや価値観においても理解を深め、認めていく必要があります。入会初期ですと、自分の役割や立ち位置が不明確で、モチベーションの低下により事業や会議への不参加につながることがあります。私自身がまさにそうでした。今では活動できなかった時間をとても惜しく思っています。それに重ね、近年ではコロナ禍での自粛や接触を控えるため、対面での機会が激減しています。今後はそれがニューノーマルになっていくのだと思います。そのため今までと同様の考え方では、持続可能な組織体制を築くことは難しく、改めて組織の在り方などを見直す必要性があると考えます。また、2022 年度は山梨ブロック大会の主管 LOM となります。ブロック大会を成功に導くには LOM が一丸とならなければなりません。そのためにも組織づくりが必要不可欠です。強い組織づくりのためには、まず個々のナラティブ(物語)を理解し、相手を認め合い、信頼関係を構築していくことが重要だと考えます。そして、同じ目標に向かい行動していくために、価値観を共有することが大切です。次に目標を達成するために共通の関心を見つけ、個々のリソースを交換しあうことが大切です。その過程で助け愛、支え愛、感謝し愛、その時の気持ちを共有することで信頼関係が築かれます。それが大きな事業を成功に導くために必要なことだと考えます。2021 年度は 14 名もの仲間が加わってくれました。誰もが 30 歳前後と若く、地域のために長く活動してくれるエネルギー溢れる魅力いっぱいの青年たちです。この青年たちが、将来輝いていくためにも持続可能な組織づくりを構築していきます。

【元気を贈る青少年育成事業】

コロナ禍で、誰しもが当たり前にできたことが出来なくなり、子供の成長の機会すらも奪われています。実際に、行事の柱となる学芸会や運動会などがほぼ、中止や規模の縮小を余儀なくされています。学芸会などは、子供たち全員が一丸となり、一年間練習してきたことを発表して、それを親御さん方に見てもらうことで子供たち自身も喜びを感じられる機会です。全員一緒に何かをやりとげ活躍する場なので、1人ではできません。つまり、この瞬間は子供と親御さんにとって成長が垣間見える唯一無二の体験となります。どのような時でも子供たちの成長の機会を守っていくことがとても大切だと考えます。一方で、私ごとではありますが、昨年父が倒れ、余命3日と言われたことがありました。感染防止対策ゆえに立ち合い制限があり、幼い私の娘は父と面会することができませんでしたが、少しでも顔を見せてあげたいと思い、その場でテレビ電話をしました。とても苦しそうな表情に、笑みが零れ始めました。それから数日後、奇跡が起き、父は退院することができました。この出来事から、子供たちの溢れる笑顔と頑張る姿は、長引くコロナ禍で活気を失った人々を元気にする希望の光になると実感しています。子供たちの活躍の場を絶やさず守り続けることが、未来を担う子供たちの成長につながり、甲州市の多くの方々に元気が届くと私は確信しています。

【大切なモノを伝えていく広報】

いまや広報とは、「広く、多く」に活動内容や事実を伝えることだけではなく、「狭く、濃く」情報発信することも大切です。時代に合わせ、私たちの運動をいかにして多くの人の心へ届けることができるのか、深く響かせることが出来るのかがとても重要です。一方で、それは対外向けだけではなく、対内的にも同様のことがいえます。会員に、なぜこの事業を行っているのか、または目的は何で、どこに向かっているのかを知ってもらえれば、本当の意味での協力を得ることはできます。それらを伝えることが出来た時、組織は一丸となって大きな力を生み、最大限に活性化されます。そのため、このように多くの人で組織されている青年会議所において、広報はとても重要な位置づけとなります。私たちが事業を計画する上で、そこに携わった会員が真剣に向き合い、時間と労力を使い、形にしています。その時間は莫大な時間にも及び、いわばそこに関わる多くの人の想いが積み重なった結晶のようなモノです。この結晶を多くの人に知ってもらうため、広報に愛を込めて一年間の運動及び活動を、大切に発信していきます。

【未来につなぐ仲間づくり】

青年会議所は、常に組織を若々しく保つため 20 歳から 40 歳という年齢制限を設けています。そのため、地域に貢献する青年会議所運動を続けていくためには、常に新しい仲間を拡大していく必要があります。昨今、拡大に対する課題はとても深刻です。少子化問題、転出などに伴う人口減少により、難しくなっています。さらにはコロナ禍により、人が分断されてしまったため対面でのコミュニケーションを取ることができず益々難しくなっていくでしょう。しかし、例えどのような状況下であっても、工夫をすれば必ず出会うことはできます。リモートにより誰とでもつながることができる時代だからこそ、ツールを巧みに使い積極的にコミュニケーションを取るべきです。そして、今後は「できない」という先入観を捨て、「誰でもできる」、「何とかなる」という方向へ変えていくことで新たな仲間が集まりやすい環境になると考えます。また、様々な立場の方が入会するメリットや多様性が組織にもたらす効果は「イノベーションを生む」、「様々なリソースを交換し合える」など非常に大きく青年会議所の力になると考えます。今までの(一社)甲州青年会議所の会員は、経営者の方の割合が大半を占めていましたが、最近は違う立場の方々が続々と入会しています。この流れは、組織がより良い方向へ進んでいる形だと思います。そして、この出会いに感謝するように、入会していただいた後のフォローアップにも重点に置き、with コロナでもコミュニケーションを取れる形を構築していきます。どのような状況下であっても、共に成長しながら地域の課題を解決できる仲間との出会いを探していきます。

【結びに】

with コロナにより、当たり前にできていたことができない、強制的に変化を余儀なくされ、皆、本当に苦労されています。しかし、常にその時の課題に向き合い、自ら率先して解決できることを見つけていくのが私たち青年会議所であります。2022 年度は、山梨ブロック大会の主管 LOM、翌年には創立 50 周年を控え、とても重要な年となります。昨年には 9 名もの会員が卒業され、2022 年度は半数以上がアカデミー会員となり、組織づくりが重要課題となります。大きな舞台を控え不安もありますが、こ
の機会を困難と捉えるのではなく、組織にとっても自分にとっても最大のチャンスであり、それを乗り越えることで会員と組織を大きく成長させ、信頼関係を強く深めることができます。コロナ禍により課題が浮き彫りになった今こそ、50 周年を目前とした私たちのために必然的に課された成長の機会であり、意義を持った青年会議所運動ができるのです。但し、「言うは易く行うは難し」これを乗り越えることは簡単なことではありません。この重みを一緒に背負い走り抜いてくれる仲間、コロナ禍であっても、青年会議所運動に理解を示し、愛をもって支えてくれる家族と協力者に、まずは感謝をしなければなりません。私は、今までの青年会議所の経験を通じて、愛と感謝の気持ちを育むことができました。今の私は愛と感謝に満ち溢れています。この気持ちに応えるべく、私は全力で突き進み、新しい仲間と愛の溢れる一年を描き、50 周年へ、より良いバトンを渡します。そして甲州市と私たち青年会議所の輝ける未来のために、愛をふりまき、共に一年間活動していきましょう。私は、皆を愛しています。

■ 2022 年度 slogan ■
愛が鍵となる…
~ 助け愛、支え愛、感謝し愛、伝え愛、つなぎ愛 ~
【 基本方針】
□ベジ食べる KOSHU ブランディング
□ナラティブアプローチによる組織改革
□元気を贈る青少年育成事業
□大切なモノを伝えていく広報
□未来につなぐ 10 名の会員拡大